人はなぜ同じ間違いをくり返すのか -数学者が教える「間違い」を生かすヒント- | 一般社団法人 中部品質管理協会

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-数学者が教える「間違い」を生かすヒント-

 

著者、野崎昭弘氏は、論理数学者である。仕事柄、タイトルを見ると関心がいき手にした。基本的なことだからそう新しいことはないが、考え方がよく整理されていて参考になった。
間違えることは他の動物にはない、人間の特権である。ならば、それを利用しない手はないだろう。本質的な理解を深め、本人の能力を高めるには間違えることが欠かせない。間違うことについて考えることが本質を理解することで、考える過程が重要である。たとえ、理解できなくても考えに考え抜くことで、少しでもよい解決策を選べる可能性が増えていく。
しかしながら教育の立場から、① 教える方も教えられる方もすぐに答えを示した方が効率的だから、「答えがわからなければ考える」という習慣が消滅しかかっている。② 学生がインターネットからダウンロードしてレポートを提出する。中味の言葉を聞いても答えられない。「わかる」とか「理解する」ということがどういうことなのかがわかっていない。だから、間違えていることすらも気付かないという現象が起こりつつある、といった危機感を訴える。企業も大丈夫だろうか。
「間違い」を犯す7つの思考タイプと対処法を紹介している。これは、一人の人でもいくつかの要素をもっているし、時によってそういう行動を起こすことがあるから注意しなければならない。
①落雷型(なにかにひらめいたらすぐにそれに飛びつく。思いこみ)。②猫のお化粧型(同じことをくり返しているばかりで前に進めない)。③めだかの学校型(群れるのが好きで付和雷同に慣れている。みんなでやれば怖くない)。④這っても黒豆型(頑固一徹で間違いを認めようとしない。客観性を欠く思いこみは重大事故をもたらす)。⑤馬耳東風型(反対意見を賛成意見に聞こえる都合のよさ)。⑥お殿さま型(下々の悩みが理解できない。本人は悪気がないが、相手の立場に立って考えることができない)。⑦即物即応型(抽象的なことを考えるのが苦手)。
自分にもこういうタイプの間違いを犯すかもしれない、という発想を常に頭に置いておく。人の意見を聞くときは、「この人は何をいいたいのか」と理解しようとすることが大切である。
間違いを生かすためには、間違いを分析することで、わかることに近づくことである。よい間違いとは、反省のしがいのある間違いであり、あとの成長につながる。そして、間違いを分析するプロセスのポイントは、間違いに気付くことと、間違いを反省すること(①間違いの原因に気付くこと、②どうすればよいかの対策を考えること。)である。だめだ、と感情的に落ち込むのではなく、理性的に反省することが大切である。
次に反省で留意しなければならないことは、①犯人さがし、責任のなすり合いをしない。理性的に何が悪かったか、どうすればよいかを考える。②成功体験におぼれない、③プライドにとらわれず、間違いを指摘する人の意見を素直に聞く、ことである。
さらに、対策を考えるうえで大切なことは、現状を正しく理解して、間違いの本質を見極めるために、①視点を変えることで、盲点を減らしていく。②ものごとを俯瞰して見る、ことである。そして、「書くこと」、すなわち、具体的な言葉にして、間違いと向き合うことである。原因を冷静に反省し、書きとめる。対策は「○○をしないこと」ではなく、プラスで「どうすれば間違えることはないか」の内容で表現し、それを、身近において、活用することである。   (杉山 哲朗)