考える力をつける3つの道具 | 一般社団法人 中部品質管理協会

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著者の岸良裕司氏は、ゴールドラットのTOC(制約理論)に共感し、「3方よしの公共事業改革を」を発表、行政改革分野へのTOCの展開を図っている。さらに、子供たちに自分の行動に責任を持って、しっかりした考え方を身につけさせる、というねらいで教育界にも「教育のためのTOC」として推進している。本書は、マンガ(奥様が執筆)と図を使って判り易く解説している。

カメとの競走に負けたウサギ、暑い夏に一生懸命働いているアリを馬鹿にしたキリギリスの童話から、誰もが目先のことだけにとらわれ、問題を先送りにしている実態から説き起こし、問題解決の基本となる考え方を紹介している。

1.ブランチ(ごちゃごちゃスッキリ)。① 問題の確認、② 問題の起きた事実の確認、③ 原因の追求、④ 原因の解消策の立案、のステップで、因果関係をロジックツリーで考えていくものである。とくに、原因を考えるときは、一つだけでなく、他に原因は考えられないか。対策を考えるときは、行動だけでなく、当たり前と考えている前提も変えることを検討することが重要である。

2.クラウド(もやもや解消)。「あちら立てれば、こちら立たず」の対立を解消するための道具で、これも対立する2つの行動→それぞれをしたいという要望→最終的な共通目的、を図解する。そして、対立構造に潜む「思い込み」を見つけ、「相手の立場に立って考える」ことにより、対立している行動の両方を満たし、共通目的を実現する手段を見出そうというものである。

3.アンビシャス・ターゲットツリー(どんよりバイバイ)。目標を達成するための系統図である。いきなり、最終目的を達成するための手段を考えるのではなく、目標の達成を阻む障害を挙げる。そして、その障害を避けるための中間目標を設定し、それを達成する手段と順序を考えて、実行するのである。

ゴールドラット博士は、イスラエルの物理学者で、「科学とは、率直な論理の導出によって、多くの自然現象の存在を最小限の仮定で説明する方法である」とし、現実を直視して、その現実を論理的かつ正確に思考すれば、人と人に関わる社会科学の分野にも進化させることができると考えた。そして、「ザ・ゴール」をはじめ、企業における全体最適のマネジメント理論を世に出している。

本書でも紹介されている(「ザ・チヨイス」の本が詳しい)考える力を妨げる4つの習慣(ものごとは複雑だと考える、人のせいにする、対立は仕方がないと考える、わかっていると思う)から脱却し、科学者の心を持つための信念(ものごとはそもそもシンプルである、人はもともと善良である、ウィン・ウィンは常に可能である、わかっていると決していわない)で、ことにあたれば、いかなる問題も解決できると考えている。

シンプルな考え方ほど徹底して修得することは難しいが、訓練によって体得が可能である。子供から大人まで、多くの人がこの考え方を体得し、問題解決を実践すれば、日本の将来は明るいだろう。インターネットにも、TOCfEの活動の実情が詳しく紹介されている。          (杉山 哲朗)