アダプト思考 | 一般社団法人 中部品質管理協会

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「予測不可能社会で成功に導くアプローチ」と副題にあるように、「失敗に学べ」とか、「世の中で生き残るのは、強いものではなく変化に対応できるものである」(ダーウィンの進化論からのようにいわれるが、本当は言っていない)という格言を実践して、複雑な問題(例えば、地球温暖化、金融破綻)にアダプト(適応)していくための戦略と戦術を教えてくれる。

戦略の理想は、的確な情報を集めて大局を掴む、同じ方向に進む強いチームをつくる、情報が上から下へ、下から上へ流れる指揮系統をつくること、が大切であるとされる。しかし、アメリカはベトナム戦争でも、イラク戦争でも同じ失敗を犯している。ベトナム戦争では、ジョンソンとマクナマラが組織への忠誠と全員一致を強調するあまり、異見に耳を傾けることが無かった。イラク戦争では、ラムズフェルドが失敗した戦略を修正する組織を持たなかったことが要因である。「武勢勢力はレーザースクリーンに映らない」ように、どんなに優れたコンピューも、時間と場所が特定された詳細知識を教えてはくれない。適応能力の高い熟練者に、自由に意思決定ができる権限を与えることが、不確実な状況下の戦いにおいて勝つための方法である。アダプトな組織は、権限を分散させ、階層がフラットで、素早く対応できる人を評価する。

アダプト思考の原則は、次の3つであるという。1.新しいことに挑戦する(変異)、2.失敗しても大きな問題にならない規模にする(生存能力)、3.フィードバックを受けられるように、失敗に学びながら進む(選択)。

1.の変異のためには、大量の実験をやり、新しいアイディアを創出することである。エジソンは、「真の成功とは、24時間の中でどれだけの数の実験を詰め込めるかによって決まる。」と言った。様々なアイディアを混合する、既成概念にとらわれない、リスクの高いアイディアも受け入れる等で、成功へのアイディアを導くことである。3.の選択の方法として、A/Bテストと称するランダム比較テストの社会、マーケティング分野の事例を紹介している。障害があっても、道が開けるまでイモ虫のように観察することが大切である。また、初めからベストを求めなくても、フィードバックを働かせながらやることも大切である。2.の失敗への対処については、こだわりを捨て、自分の間違いを認めて状況に適応すること。人は、①否認(自分の都合の悪いことを認めない)、②損失を取り戻そうとさらに損失を膨らますような自滅行動に陥りやすい、③情報を自分の都合のよいように解釈する、という性向がある。自分が間違ったらどうなるか、自分のやり方を絶えず検証しつつ思考を進めるとともに、本当のことを言ってくれる友人を味方につけることが大切である。

秩序ある多元主義といっているが、アダプト思考は、新しい経験をする、多くの人と出会う、知らない場所へ行ってみる等、新しいことを試みる一方、失敗する勇気を持って挑戦し、実験をトライして結果がうまくでるまでくりかえすことが大切である、という実りある人生を実現するための教訓にもつながる。     (杉山 哲朗)