戦略サファリ | 一般社団法人 中部品質管理協会

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 三谷宏治著「経営戦略全史」によれば、経営戦略は、大別すると、ポジショニング派(外部環境を考えて、儲かる市場を指向する)と、ケイパビリティ派(内部環境を整えて自社の強みを改善する)がある。さらにその統合が大切だという説もあり、その代表がミンツバーグの「戦略サファリ」である。副題に、「戦略マネジメント、コンプリートガイドブック」とある通り、多くの戦略とその活用が解説されている。(以下は、戦略と記述。)
 「群盲象をなでる」の諺にある通り、戦略は様々の見方ができ、10の顔(スクールと呼ぶ)を持つ。ポジショニングには、デザイン(コンセプト構想)、プランニング(形式的策定)、ポジショニング(分析)、アントレプレナー(ビジョン創造)が、そして、ケイパビリティには、コグニティブ(認知)、ラーニング(創発的学習)、パワー(交渉)、カルチャー(集合的)、エンバイロメント(環境対応)、コンフィギュレーション(組織とプロセス)がある。519の参考文献から、それぞれの利害得失と活用について解説している。
 戦略とは、組織のミッションおよび目標に沿って成果を達成するためのトップマネジメントによるプランである、と定義される。企業は、その存在価値の達成のために、日常管理に目配りをするとともに、終わりのないプロセスを導き、行動や目的の中心にパースペクティブをもたらすことが戦略マネジメントの役割である。そして、その役割は、方向を決める、組織の力を結集させる、組織を定義づける、一貫性をもたらすものである。ややもすると、戦略を生み出す手法、形成プロセスに目がいきがちであるが、成果を生み出すのは人の行動であることを忘れてはならない。参考になったことを、二、三紹介したい。
・戦略思考の枠組みとしてのものの見方。後ろを見る→過去の理解、前を見る→将来の予想と構想、上から見る→全体像、下を見る→帰納的思考と発掘、横を見る→水平思考、見越す→将来を創りだす、全体を通じて見る→戦略的、が大切である。
・戦略は、新しい声、新しい会話、新しい情熱、新しいパースペクティブ、新しい実験、によって、多様性のあるプロセスから多元性のあるものを創造しなければならない。そのために、創発、自己組織化、認知や組織学習が必要である。
・組織は、夢や希望や嫉妬心や利害や恐れを持つ「一人ひとり」の個人から構成されている。従って、意図が実行段階で歪む齟齬があったり、時間の経過とともに漂流する。
・カルチャーは、品質、効率性、サービス等を崇拝する長年のイデオロギーによって形成され、集団が時間をかけて創りだし、共有される価値である。そして、企業の安定性・継続性と独自性をもたらす。市場で競争するのは製品ではなく生産システムであり、人的資本、組織的資本である。カルチャーは、貴重、稀少で、模倣ができず、代替が存在しない。
・優れた企業は、拮抗する要素をうまく融合できる。計画的でありながら漸進的、支配型でありながら参加型、統制しながら権限を委譲、ビジョナリーでありながら細かいところに目がいく。第一級の頭脳の持ち主は、相反する考え方をもちながらきちんと行動できる。
 今の日本の企業戦略を見たとき、経営者のビジョン、社会的責任と企業価値に対する認識、オペレーションへの執着心はどうだろうか。また、日本企業の強みといえたカルチャーが揺らいでいるのではないだろうか。経営者、企画部門には、腰を据えた戦略マネジメントを期待したい。                        (杉山 哲朗)