隠れたチャンピオン企業 | 一般社団法人 中部品質管理協会

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 著者のハーマン・サイモンはドイツの大学で経営学の教授を経て、経営コンサルティング会社の会長を務めており、若いころは客員教授として日本を訪れたことがある。日本語版に寄せてで、日本は、今、貿易赤字でかってないチャレンジに直面している。日本の人口はドイツより50%多いのに、2011年の一人当たり輸出高はドイツより50%少ない。その違いは、中堅企業の差であり、ぜひ本書の隠れたチャンピオン企業の活動に学んでほしいとエールを送る。隠れた、とあるように殆どの会社の名前は知られていない。(私の知っていたのは、クルスタルガラスのスワロフスキーとぬいぐるみのシュタイフくらい。)
 ドイツ語圏の隠れたチャンピオン企業の特徴は、以下のように要約できる。
① 成長するリーダー企業となるという目標。技術と品質で認知度を高めるビジョン、そして、世代を超える長期的な目標を掲げる。社内には、共通の目的をつくって共有し、実現に向けてのモチベーションとエネルギーを引き出す。② 市場の定義と集中戦略。用途、顧客ニーズで市場を狭く定義して、そこで強い市場を築いていく、スーパーニッチでマーケットオーナーになる戦略。③ グローバル化。同じ地域で異なる市場に参入するのではなく、狭く定義した市場を地域的に拡大させる戦略。その基礎は、精神的、文化的なグローバル化で、国際的に考え、感じ、行動する従業員にかかっている。④ 顧客と極めて近い関係にある。トップの「顧客の期待や成功が当社の事業を規定します」の発言にあるように、直接販売のシステムや最重要顧客を大切にする姿勢。そして顧客要求の重要課題は品質であり、これからはサービス、システムソリューションによる価値の提供が求められる。⑤ イノベーション。製品、技術だけでなく、プロセス、システム、サービスで革新的な活動のために開発投資を惜しまない。そして、顧客ニーズと自社の能力を組み合わせ、特化と深化を追求する。改革は継続的な改善の積み重ねからであるとする企業風土。⑥ 高い垂直統合でコア能力を強化する組織。部品を自前で作る、自社で開発した生産機械で製造することによって高い品質水準を実現している。⑦ 従業員。伝統的な価値観で、少ない人的資源と分権化によって高い生産性と業績の透明性を確保する。従業員のロイヤルティ、教育訓練、モチベーションが高品質とサービスの競争優位の土台となる。病欠率、離職率は低く、専門知識を継続させる教育投資も有効となる。⑧ リーダー。2/3は同族経営で、CEOは、平均して20年間トップの座にある。また、女性幹部も多く、グローバル化によって、経営者、管理者も国際化しており、英語が共通語になっている。
 以上の要素を見た時、長期的視点、技術・品質重視、お客様重視、従業員を大切にするという内容は、今まで日本の企業が大切にしてきた経営に他ならない。欠けているのは、グロ-バル化である。また、ホンダ、ソニーのように、今、グローバルに活躍している会社は、創業時は、隠れたチャンピオン企業であった。
 著者も認めているように、日本の技術力、産業力は、世界で成功する潜在力を持っている。隠れたチャンピオン企業の活動事例を参考にして、日本の中堅企業がグローバル化を積極的に進めることによって、日本の輸出力強化に貢献して欲しい。そして、アベノミクスの第3の矢である成長戦略の一つの柱になることを期待する。    (杉山 哲朗)