ユニ・チャーム 共振の経営 | 一般社団法人 中部品質管理協会

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久々に、日本の経営者が、経営理念と行動を発信した本である。著者、ユニ・チャーム高原豪久社長は、2001年、創業から40年、牽引してきた創業者の父親、慶一朗氏を引き継ぎ、社長に就任した。そして、2014年6月には、売上、5995億円と3倍に成長、売り上げ構成でも、国内4割、海外6割と世界80カ国で販売している。共振の経営とは、日々の知恵が現場と経営の間を行ったり、来たりする振り子のように共振させることを意味する。

1.経営の考え方、ビジョン。1次情報を大切にし、現場で養った直感力を大切にする。どれだけ現場に足を運び、耳の痛い話を聞いたか、「顧客の心にある真実」を直視することである。そのために現地に赴き、現地で暮らしてみる経験を積ませている。

赤ちゃんからお年寄りまで、生活者すべての領域で、より多くの夢をかなえる「NOLA&DORA」のビジョンを掲げ、「その人らしく生きることを支援する」ことを会社の使命としている。

2.製品開発。モノ創りの3つの信念、①常に新しいことを提案する、②カテゴリー全体を伸ばす、③お得意様には必ず先に伸びていただく、を実践する。おむつ一つとってみても、おむつ離れを支援するトレパンマン、下着へのバトンタッチをするオヤスミマン、これまでの技術の結晶としてのムーニーマンと、顧客の実態と心をつかんだ商品を相次いで開発している。

3.経営姿勢。「正しい課題を発見し、正しい戦略を立案する」計画力と、「計画を正しく実行し、正しく効果検証し、正しく軌道修正して、目標を完遂する」という実行力で業績を向上する。ユニ・チャームウェイによる仕事の進め方のエッセンスとして、「SAPS経営実践マニュアル」を制定、海外にも翻訳して配布し、従業員の仕事の指針としている。

特に、コミットメント目標を重視する。コミットメントとは命懸けの約束の実行を意味し、コミットメント宣言をした目標については、0.1%の未達成も許されないという厳しさで臨んでいる。

(注)SAPS→Schedule(計画)、Action(計画通り行動)、Performance(効果測定と改善点の抽出)、Schedule(反省を生かした計画)

それを実践するためのしくみとして、1Pローリング表を毎週作成、実行する。1PとはFirst Priority を意味し、その中には、①前週の実践計画の反省、②実施しなかった、成果が上がらなった理由、③今月のOGISM(A)重要課題、④今週のOGISM(A)実行計画、を記入する。

(注)OGISM(A)→Objective(目的)、Goal(数値目標)、Issues(課題、5個以内)、Strategies(戦略、対策)、Measure(判定基準)、Action Plan(行動計画)

4.人材育成。人は育てられない、育つものであるの考えで、従業員に、成長を促す行動習慣として、①主体性が強い、②人脈づくりがうまい、③腰が低い、成長を促す思考習慣として、①よい取り組み姿勢、②真理を探求し、原理、原則・定石の習得をめざす、③志を忘れない、を示している。

5.改善活動のしくみ。UTMSS(Uni chrm Total Management Strategic System)により、すべての経営活動の中で、経営効率の向上を目的に、部門、個人において、主体性を発揮し、改善活動を推進する。

マネジメントとして、当たり前の内容であるが、トップが従業員に自らの考え方を示し、独自のしくみを工夫して実践していることが素晴らしい。

役に立つユニ・チャーム語録が満載で、元気をもらえる本です。  (杉山 哲朗)